デザインでもビジネスでも「情報の整理」は欠かせません。解決すべき課題とさまざまな手法。広い視点と狭い視点。時間軸と評価軸。課題解決にまつわる「情報」と、その整理手段は、無限にあるようにも感じられます。途中で目的がぶれてしまったり、なんのために今の仕事をやっているのか見失うときも。それは結局、情報を整理できていないからなのではないか?そんなモヤモヤが解決できたらいいなと思い、「今日からはじめる情報設計」を手に取ってみました。本の概要本書は、情報と人間からもたらされる混乱を解きほぐして整頓する = センスメイキングするためのプロセスを、段階を追って説明しています。その各ステップは最初から順番に書かれていますが、現実のほとんどのプロジェクトは順番通りに行きません。ですから、自由にあちこち読み飛ばしたり、巻末の用語集から特定の言葉を読み始めても構いません。- p12 2015年10月21日初版第1刷情報をセンスメイキングする(解きほぐして整頓する)ためのプロセスの本です。その過程で、そもそも「情報整理」とは何か、実践で大切なポイントは何なのかが、読みやすい文章で簡潔にまとめられています。混乱を見極める|混乱とは何か、情報設計とは何か・何ができるのかを踏まえて、混乱の原因となっている情報を見極めよう意図を表明する|「なぜ」「何を」「どうやって」という問いに向き合いながら、意図・優先すること(良いの定義)を言葉にして決めよう現実を直視する|ユーザー・チャネル・コンテクストに向き合い、道具を活用しながら課題や情報を視覚化しよう方向を決める|直視した現実から一歩進み、自分たちがそれに対して何をできるのか?を把握して選ぼう距離を測る|「意図」に対して今どの地点にいるのかを把握する指標を決め、達成度を測ろう構造で遊ぶ|情報を分類、体系化し、良い部分・悪い部分を突き詰めてさらに整理しよう調整に備える|ゴールに近づくにつれて遭遇する新しい課題に向き合い、完成(変化しないもの)を求めず、先延ばしにもせず、プロジェクト達成のため協力しようたぶんこんな人にオススメ情報設計(IA)について学びたいが難しそうだと感じているUXデザインなどで情報設計が必要で、そこで活かせる手法の基礎知識を知りたいデザイナーではないが、ビジネスにおいて課題を整理し解決へ導く普遍的なプロセスを知りたいたぶんこういう人には合わない情報設計の基本は知っていてより専門的な知識が欲しい具体的なビジネスケース(事例)を参考にしたい手っ取り早く稼ぐ方法を知りたい感想よかったところ前に読んだ「なるほどデザイン」は見た目のデザインプロセスを教えてくれましたが、この本は対照的に、見えない情報のデザインプロセスを教えてくれます。情報は、通常目に見えるものではないからこそ、課題や意図を明確にした上で必要なプロセスを経て可視化し、みんなで共有しながら設計していく必要がある。やみくもにモノを作らずとも、設計の段階から様々なアプローチで仮説検証を繰り返し、協力してより良いモノづくりができるのです。そのような設計の時間をちゃんと確保した計画を立てるべき。そんなことを考えさせられました。章の終わりにケーススタディ(事例)とワークシートがまとめられているのも親切です。印象に残ったところいくつかピックアップしました。ちなみに、訳者の安藤幸央さんは最近オライリーより「UX戦略 ―ユーザー体験から考えるプロダクト作り」を出版されました。そして監訳者の長谷川敦史さんは、株式会社コンセント…「なるほどデザイン」の筒井さんと関口さんが活躍されている会社の代表。わかりやすい内容だったことも頷けます。情報整理の役割(前書きより)人やものごとは複雑であり、複雑であること自体は悪いことではありません。世の中には、複雑な相関関係を持った複雑な事柄はいくらでもあります。すべての事柄が、単純なボタン1個を押すだけにすれば良いわけではなく、整理整頓されていることが重要なのです。1冊しかない図書館ではなく、どこに目的の本があるのか見つかれば良いのです。複雑なものも、複雑なまま、わかりやすく整頓されていればいいのです。- p6行うとは知ること知っているだけでは十分ではありません。「多くを知りすぎている」ことで、私たちはぐずぐずと手間取ることもありえます。実際に行うことよりも、知り続けることを優先すると、ある時点から混乱が増してきます。情報設計を実践するということは、あなたの今現在やっていることをいったん過去に追いやってしまう勇気を示すということです。それは、変化を促す問いかけをし続けるということです。それには、他人に対しての誠実さと信頼が必要です。- p32意図は言葉計画を作るためには、言葉が必要です。アイデアをものごとにするためには、言葉が必要なのです。たとえば私たちが、持続的でエコなデザインソリューションを作ろうとするとき、私たちはその顧客向けに、分厚くて派手なカタログを使うわけにはいかないでしょう。言葉の選択によって、私たちは自身の選択肢を制限しているのです。- p38一人で決めることはたやすいもしかすると、あなたは一人でプロジェクトに取り組んでいて、あなたが唯一のステークホルダーであり、かつ唯一のユーザーであるかもしれません。しかし大抵の場合、他の人と協力して、他の人々のために働いている可能性が高いでしょう。その際、一人きりで机の上で体験を示したマップやダイアグラムを作成しても、情報設計を実践しているとは言えません。早めに全員が関与する体制を作ることが重要です。皆と一緒に目指したゴールに向かって一歩ずつ進んでいくべきです。あらかじめ合意を得ることができない場合は、あとで仕事が増えると想定しておかなければなりません。自分以外の人の視点で世の中に目を向けると、弱点や改良のためのチャンスに気づくことができます。他のステークホルダーに隠し事をせず、プロジェクトの最終段階まで待たずに、早めにユーザーの意見に耳を傾けましょう。- p156 今日からはじめる情報設計 -センスメイキングするための7ステップなるほどデザインUX戦略 ―ユーザー体験から考えるプロダクト作り